「食品中のアクリルアミドのおはなし」

2016年に食品安全委員会が「加熱時に生じるアクリルアミド」評価書を取りまとめました。その後、農林水産省による調査研究が行われ、コーデックス委員会が採択した「食品中のアクリルアミド低減のための実施規範」に則って、食品事業者によるアクリルアミド低減の取組みが進められてきました。
なぜ、アクリルアミドが有害物として取り上げられるようになったのでしょうか。きっかけはスウェーデンで発生したトンネル工事事故でした。水漏れを防止するために使用された充填剤に多くのアクリルアミドモノマーが含まれており、漏水によって環境汚染が発生し、周辺の家畜や河川の魚に影響が出ました。スウェーデン政府とストックホルム大学は、事故影響が沈静化した後も周辺調査を継続した結果、事故とは関係のない地域の住民からもアクリルアミドを検出しました。そして、2002年にイモ類を高温処理した際にアクリルアミドが生成されることを発表し、世界中で調査研究が行われるようになりました。
現時点では、食品を通じて摂取されるアクリルアミドについては、発がんとの関連性は明確に認められないものの懸念がないとは言えない、また、発がん以外のリスクは極めて低いとされております。（食品安全委員会報告）

一方でヒトの摂取許容量を決めることができないため、食品中のアクリルアミド濃度の基準値は、ほぼすべての国で設定されておりません。食品中にアクリルアミドができる主な原因は、原材料に含まれているアミノ酸と糖類が、揚げる、焼く、焙るなど、120℃以上の加熱により化学反応を起こし生成されると考えられています。

つまり加熱しなければ食品中にアクリルアミドは生成されないのではないかと考えられますが、加熱は食品成分の化学変化を起こし、色や風味といった食品の美味しさにとってとても重要な役割を果たしております。また有害な微生物の殺菌といった側面もあります。その為、食品の品質（色・風味）を保ちながら、アクリルアミドの生成を抑える加熱調理はとても難しく、世界中の研究者や食品企業は、食品に含まれるアクリルアミドをできるだけ少なくするための研究を続けています。

当協会ではＬＣ－ＭＳ／ＭＳを用いてアクリルアミドの測定を行っております。ISO17025：2017（試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項）の認定を取得しており、加工食品全般を対象に信頼性の高い試験を実施しております。